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このサイトでご紹介するSDQ(Strength and Difficulties Questionnaire:子どもの強さと困難さアンケート)は、簡便なスクリーニング式質問票で、幼児期から青年期にかけて、適応と精神的健康の状態を包括的に評価できることから、世界中の多くの国々で使用されているものです。

設立のごあいさつ


 発達障害をとりまく世界の状況はこの30年間余りで大きく様変わりしました。私たちの日本でも、研究予算は十分とは言えないまでも増え、さまざまな事業への財政投入も増えました。発達障害に特化した法律は、すでに最初の改正を経ており、地域での支援体制の整備は徐々に進んできました。以前のようにごく一部の専門家だけが支援を担うのではなく、必ずしも専門家ではない多くの人々が支援者の輪に加わり、発達障害のある子どもの子育てと家族へのサポートが広がりつつあります。実際に、早期から支援を受ける子どもは格段に増え、学校での支援体制も校外からの人的サポートを取り入れて変わりつつあります。

 発達障害の臨床と研究に30年余り携わってきた者として、こうした社会全体の変化の方向をうれしく思う一方で、その変化の遅さにもどかしさも感じています。まだ発達障害全体を説明できるメカニズムが解明されておらず、根本治療は存在しないのですが、それでも今日では、これまでの研究エビデンスに基づいて、その人それぞれに現時点でベターと考えられる支援・治療を提案することが可能になりました。ただし、自閉スペクトラム症(ASD)にしろ、注意欠如・多動性障害(ADHD)にしろ、発達障害と分類される臨床像や背景は個人差が大きく、標準的な支援・治療の効果にも個人差が大きいという課題があります。治療効果を最大にするためには、できるだけ個別化した支援・治療を計画し、継続的に実施することが必要になりますが、専門家、専門機関の少ない現状では、また日本の現行の診療報酬体系のもとでは医療機関はこのように個別化した支援・治療をしたくても難しいと言わざるをえません。研究と臨床現場とのギャップはあまりにも大きいのです。

 発達障害クリニック附属研究所では、早期から、個別的に支援・治療を行うことが後の心の健康と社会生活の質にどのような影響を及ぼすかについて、臨床研究をしてまいります。将来の政策決定の根拠となるような臨床現場でのエビデンス作りを広げて、支援者、そして広く社会に発信することを当研究所のミッションとし、一歩一歩研究仲間の輪を広げて、邁進したいと思います。

所長のプロフィール


略歴:
1983年京都大学医学部卒業、ロンドン大学付属精神医学研究所留学、京大精神神経科助手、2000年米国コネティカット大学フルブライト客員研究員、2001 年九州大学大学院人間環境学研究院助教授を経て、2006年-2018年3月まで国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部部長。

現在は発達障害の臨床研究や教育・医・福祉の多領域連携システム構築に携わる傍ら、診療活動や学校医および福祉施設の嘱託医を務める。

現職:
日本学術会議第二部会員、臨床医学委員会委員長(臨床医学委員会出生・発達分科会委員長、アディクション分科会副委員長、脳とこころ分科会委員、子どもの成育環境分科会委員)、科学的エビデンスに基づく「スポーツの価値」の普及の在り方に関する委員会委員
科学技術振興機構-社会技術研究開発センター 運営評価委員
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・予精神医学研究部 客員研究員
お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所人間発達基礎研究部門 客員教授

学会活動:
国際自閉症研究会議(International Society for Autism Research: IMSAR)学会誌(Autism Research) 編集委員、日本精神神経学会 精神医学研究推進委員会 委員
日本発達障害学会 理事、常任編集委員、日本自閉症スペクトラム学会 理事、研究奨励賞・実践研究賞選考委員、日本生物学的精神医学会 評議員、日本小児連絡協議会(日本小児保健協会、日本小児科学会、日本小児科医会、日本小児科関連学会協議会:四者協)発達障害への対応委員会委員、日本行為依存症医学会 アドバイザー、日本精神保健・予防学会 評議員

専門領域:
児童青年精神医学、発達障害

2019年6月 発達障害クリニック附属研究所所長 神尾陽子


第3回研究会 - 2019年7月1日 -

「アタッチメント研究とアタッチメント理論に基づく支援」


話題提供者:近藤清美先生
帝京大学文学部

 近藤清美先生をお招きして、アタッチメントおよびアタッチメントの障害についての勉強会を持ちました。大変関心の高いテーマのため、クリニック外からの参加者も含め、総勢18名となり、カンファレンスルームから溢れる盛況ぶりでした。

 最新の研究動向の講義をしていただき、「アタッチメント理論」を参照する際にいくつか留意すべき点を整理することができました。

 第1に、アタッチメントの原義は、危機的状況下において「確実な避難場所」となる対象を指しているのに対して、日本では和訳の「愛着」の影響を受け、「母子間の一対一の排他的関わり」という認識が根強いということ、第2に、愛着形成に階層性があるという従来の考え方は、最近のオランダやイスラエルでの研究結果から否定され、母親だけでなく複数のアタッチメント対象から統合されうるということ、第3に、アタッチメントのタイプは子どもあるいは養育者の要因だけが注目される傾向にあるが、アタッチメントのパターンはあくまで関係性の文脈の中で生じるものであり、双方向的な関わりの中でどのようにして行動様式が形成されたかを捉えることが必要であること。

 特に自閉スペクトラム症のある子どもでは機能レベルがアタッチメントのパターン形成に影響を及ぼす可能性が示唆されているため、アタッチメントの非安全タイプ イコール マルトリートメントといった、一面的な捉え方ではなく、「なぜこの親子の間でこうしたアタッチメントのパターンが形成されたのか」を多面的に理解する必要性があることを再認識することができました。

第2回研究会 - 2019年4月19日 -

「Parent training programs for children with autism spectrum disorders.」


話題提供者:Prof Dr. Nahit Motaballi Mukaddes
Istanbul Institute of Child and Adolescent Psychiatry 前Istanbul University 児童精神医学教授

 当研究所所長の神尾が長年、親しくおつきあいしているProf Dr. Nahit Motaballi Mukaddesをお迎えして、Parent training programs for children with autism spectrum disordersについての講義をして頂きました。

 先生は大学教授時代からクリニックでの臨床を続けてこられ、現在はクリニックを拠点としてエネルギッシュにトルコの発達障害臨床と研究をリードされています。

 彼女の臨床は、行動介入の原理を踏まえたエビデンスを大切にしながら、トルコ文化特有の家族関係や愛着を大切にしたもので、長年の地域の療育実践家とのスムーズな連携構築によって実現されています。

 講義では、就学前の保育現場に、ASDの特性をよく理解したスタッフが、定型児を主とする集団「遊び」の中で自然にASD児が参加できるよう支援する様子が、ケースの動画を通して提示されました。日本の保育所や幼稚園の現場での発達障害/発達障害特性の高い子どもへの個別的支援のあり方について示唆が大きいものと考えられました。

第1回研究会 - 2019年4月16日 -

「子どもの発達を促すための多層的な支援システムの構築」
Supporting Students’ Development and Wellbeing through the Multi-tiered System of Support (MTSS)


話題提供者:堀口真里先生
元シンガポール教育省教育心理士

 第一回の勉強会では、近年、学校心理学の分野でアメリカやシンガポールで広く使われている「多層的な支援システム(Multi-tiered System of Support; MTSS)」の概念を中心に、日本と海外の教育現場での特別支援について話し合いました。

 オーストラリアとシンガポールで心理士の経験を積んできた堀口先生が、シンガポールの教育体制を中心に共有しました。

 学力・社会性・情動など様々な側面において子どもの学校での適応を促進するために、MTSSの概念を使ってシステムから変えていく動きが広まりつつあるようです。